煎茶道・薫風流について
「煎茶道」とは
煎茶道とは、江戸時代から続く日本の芸道の一つです。茶筅で粉の抹茶を点てる茶道に対して、急須を用いて茶葉から日本茶を淹れるお手前を行います。
煎じた茶、すなわち煎茶は、江戸時代初期に中国から渡来して黄檗山万福寺を開いた高僧・隠元禅師にもたらされました。
そして煎茶道の始まりは、江戸時代中期に黄檗宗の禅僧・売茶翁が京の民衆へ煎じた茶を振舞ったこととされます。格式高く形式化しつつあった茶の在り方に一石を投じ、茶を交えた真摯な交流の場を改めて生み出そうとしました。
その後、煎茶の喫茶文化は江戸時代中・後期に花開いた文人文化と交わるなかで世に広がってゆきます。そこへ一定の形式や礼法を加えたものが、現在の煎茶道として定着しました。
煎茶道のお手前は、茶葉と急須を用いて二煎出しを行うことが特徴です。
ひと肌くらいに温かい甘くて旨い一煎目に、砂糖の利いたお茶菓子、そして沸き立てのお湯で淹れた苦くて渋い二煎目。このように、煎茶道は一度のお手前の中でお茶の甘渋苦を余すことなく味わいます。
特に、煎茶よりも上質な玉露の二煎出しは、まるで出汁のような一煎目の豊かな旨味と、甘いお菓子を食べてから飲む二煎目の爽快な苦味の組み合わせに、初めて口にすれば驚かされること間違いありません。
「薫風流」とは
薫風流は、大正七年五月に名古屋で創流された煎茶道の一流派です。新緑の芽吹く初夏の穏やかな風、すなわち薫風にその名を由来します。
流派の紋である緑の風車には、薫風が瑞々しい新緑を吹き抜ける爽やかな様を連想させられます。
薫風流の標語は、和・爽快・風雅・新鮮。
流派の名「薫風」にも通ずるこの標語には、形式ばらずに風流を楽しみながら精神修養に励む心持ちが垣間見えます。
実際、初代お家元の加藤景石先生は、お手前では形式にこだわるよりも美味しいお茶を淹れることにいつも心血を注いでいたとお聞きします。
薫風流のお手前では、煎茶道の基本である煎茶と玉露の他にも、四季のめぐりに合わせて幅広い種類のお茶を扱います。
春には桜花で薄めの焙じ茶を彩った桜茶、夏にはガラス茶器との取り合わせが涼しげな水出しの冷茶、秋には焙じ茶に菊花を咲かせた菊茶、冬には焙じ茶を梅干しと結び昆布で味わい深くした大福茶といった具合に、四季それぞれに時候の風雅を取り入れたお茶を頂きます。
茶道具やお茶菓子、飾り物は勿論のこと、お茶そのものにまで四季の趣向を大切にすることも薫風流の大きな魅力です。